どのようなものでもそうですが、新しい仕組みができた時には、その仕組みを知らないことに付け込んだ詐欺まがいのトラブルが発生することがあります。また詐欺ではなくても認識不足による問題が起こりうる可能性もあります。
電気を取り巻く環境は大きく仕組みが変わりました。今まで我々消費者には、電力会社を選べる選択肢がありませんでしたが、電力自由化に伴い100社を超える新電力の会社が電気を売り始めたのです。
今までの電気料金よりかなり安くなるケースや各種サービスが付帯されるプランを提示され、安易に契約を結んでしまったためにトラブルになるケースも報告されています。
これらの中には、きちんと仕組みを把握していれば回避できたものもあります。いずれにしましても契約に関しては十分注意する必要がありそうです。
ここでは新電力の契約時に気をつけることや、万が一トラブルになった時に相談する窓口などをお知らせしています。まずは仕組みを理解し、どのようなトラブルの可能性があるのかを知ることで、それらを回避することが大切です。
1. 新電力の仕組みと契約方法
1-1. 新電力誕生と経緯
「新電力」は既存の地域電力会社(東京電力、関西電力など全国に10社ある既存の電力会社)とは区別され、新規で電力業界に参入してきた企業のことです。
新電力は国の「電力システム改革」の中で生まれました。電力システム改革は、電気を安定的かつ効率よく使うための改革ですが、同時に地域の電力会社が独占していた電力業界に市場原理を取り入れ、電気代を安くする目的も掲げられています。
2016年4月から始まった電気小売の完全自由化により、電力市場では「電気料金を安くする」「各種サービスを付加する」など、新電力各社が多様なメニューを提示しており、各社の競争が激しくなっています。
新電力は、これまで独占体制だった電力市場に風穴を開ける存在となったのです。
1-2. 新電力の電力供給の仕組み
電力システム改革は「電力の安定供給」「電気料金をできるだけおさえる」「需要家(消費者)の選択肢や事業者の事業機会を増やす」この3つを基本柱としています。
そのため「電力の安定供給」に関しては、新電力を含む全ての電力会社が既存の送配電網ネットワークを共同で使い、国の機関(電力・ガス取引監視委員会)が電力安定供給の監視を行っています。
小売り業者が変わっても、電気が送られてくる仕組みは今までと変わらないため、切り替え後も安定して電気を使うことが可能になっているのです。
1-3. 新電力の契約方法
新電力との契約は非常に簡単で、新しく契約する会社への申し込みすることでほぼ完了します。スマートメーター(電気使用量を計測し、新電力会社へ計測結果を送信する機能のついたデジタル検針機器)の設置も従来の電力会社が基本的には無料で行います。
また今まで契約していた電力会社(たいていは地域の電力会社になると思います)への連絡も不要ですし、電力会社間できちんと移行が完了できる仕組みになっているのです。
2. 新電力の契約時に気をつけること
前述したように新電力の参入により価格競争も始まってきました。新電力各社は様々なPR活動を行い、占有率を高める努力をしています。
しかし、これまでは地域の電力会社が独占していた市場だったため、消費者には「電気を選ぶ」という考え方がありません。知らないことで不利な契約をしないよう、十分に注意をしながら契約する必要があります。
新電力との契約で少しでも不安に感じることは、公的な機関へ相談することをおすすめします。公的機関の連絡先などは、「2-8. トラブルは公的機関に相談する」に記載しています。
2-1. 複数の新電力との契約は可能か?
お得なメニューやポイントの付加、各種サービスが付帯された新電力ですから、複数の会社と契約はできないものか?と考えたくなりますが、残念ならが複数社との契約はできません。
一つの事業所や家庭には、「供給地点特定番号」という電気供給のための住所のような番号が割り振られています。一つの番号には一つの小売電気事業者しか電気を供給できないことになっています。
注意しておきたいのは、地域の電力会社から新電力に切り替える際は、地域電力会社への連絡は不要ですが、新電力から別の新電力に切り替える際には、前新電力との契約を解除しておく必要があることです。
新電力は各社がどんどんお得なプランを出してきますから、始めに契約していた会社よりもっと条件の良い新電力が後から見つかる場合もあります。
もちろん前の新電力との契約を解消すれば、次の新電力との契約も可能ですが、違約金などが発生する場合もありますから、しっかり選んでから契約をするようにしましょう。
2-2. 違約金に注意する
新電力のメニューには契約期間を設けているプランもあります。契約期間中に解約した場合の違約金については必ず確認しておきましょう。
またセット販売の場合は、電気の契約期間が終了していても、他のサービスが継続中であれば違約金が発生するケースもありますので注意が必要です。
2-3. クーリングオフ制度について
新電力の契約に関してもクーリングオフ制度により消費者は守られています。
電話や訪問販売による強引な勧誘などで契約を結んでしまった場合には、クーリングオフ制度により解約が可能です。(インターネットや店頭での契約は、クーリングオフの対象になりません)
クーリングオフは、契約書や契約内容の書面を受け取った日から8日間が有効期間ですから、期間中に手続きをするようにします。
2-4. 契約の解除
何らかの理由で契約していた新電力を解約したい場合は、契約会社に手続き方法を確認して解約します。強引な引き止めや解約に応じないなどの行為は、国の「小売営業ガイドライン」で規制されています。
2-5. 詐欺に注意!
新制度が始まると、それに乗じて詐欺を働く者が出てくる可能性が高いです。これは電力自由化についても言えることであり、以前より自由化が始まっている海外では被害も報告されています。
「スマートメーターに切り替えるために費用がかかる」「早く切り替えないと電気が止まる」このようなことは全て嘘です。
疑問な点や不安を感じる時には、必ず「国民生活センター」や「電気・ガス取引監視等委員会」に相談するようにしましょう。
2-6. 勝手に契約された事例
消費者の同意を得ずに契約を変更することを「スラミング」と言い、もちろん違法行為です。
早くから電力自由化に取り組んでいた、アメリカやヨーロッパの国では、このスラミングの被害も報告されています。
この場合、電気が止まることがないので気づかなかったケースもあります。電気料金の支払い状況は常にチェックしておくようにすることが大切です。
2-7. 法外な違約金を請求された場合
契約を解除する場合に法外な違約金を請求するのも、国の「小売営業ガイドライン」で法的問題の対象とされています。ガイドラインを確認し「電気・ガス取引監視等委員会」に相談しましょう。
2-8. トラブルは公的機関に相談する
これらのケースに関わらず、少しでもおかしいと感じた場合や不安な点は、公的機関にすみやかに相談することをおすすめします。
公的機関の連絡先をまとめておきますので、参考にしてください。
※常に指針が改訂されていますから、必ず最新の情報を確認しましょう。
【電気・ガス取引監視等委員会 相談窓口(直通)】
電話:03-3501-5725
(受付時間9:30~12:00、13:00~18:30)
メール:dentorii@meti.go.jp
【国民生活センター 消費者ホットライン】
(地域の消費生活センター相談窓口に接続、または案内)
電話:局番なし118
(受付時間は地域で異なります)
3. まとめ
電力システム改革により電気供給の仕組みが変わりました。我々消費者は「電気を自由に選べる」という選択肢を手に入れました。
しかしそれは同時に「自分たちで選択の責任を持つ」ということでもあります。上手に電気を選んでいけるよう、新電力の仕組みを理解し各社のプランを比較検討していくことが大切です。
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