これは知っておきたい!新電力の電源構成についての知識

新電力

新電力をはじめとする電力会社は、供給する電力がどうような方法で作られているかをユーザーに提示することが求められており、これを電源構成の開示といいます。

今回は電源構成について様々な角度から説明していきます。

1. 新電力の電源構成とは?

電源構成とは、電気が作られる方法の割合を指し、現在、日本においては水力、火力(石油、石炭)LNG(液化天然ガス)、原子力、太陽光、風力、地熱発電などの方法があります。

全体の割合としては、火力発電(石炭火力発電と石油火力発電)が約9割となっており、2011年の東日本大震災以降、原子力発電が10.7%から2014年度にはほぼ0となっています。その分LNG(液化天然ガス)と石炭火力が増加しています。

2011年と2014年を比較すると水力を除く再生可能エネルギーが1.4%から3.2%に増加しており、火力発電の中でも石炭は減少傾向にあります。

日本はエネルギー資源を輸入に頼っているので、火力発電の燃料となる石炭、石油、液化天然ガスの価格が上昇すると電気代も上昇するということが起こります。

多くの新電力が複数の電源を調達手段として持っており、その理由は、一つの電源がなにかしらのトラブルで調達できない場合、複数の電源調達先をもっていれば、安定供給ができると言う理由からです。

新電力を始めとする電気小売事業者は、ひとつの電源だけに頼らずに、それぞれのエネルギーの特色を生かしながら、ベストな組み合わせをしていくことによってユーザーに安定した電力供給をしています。

以下電源別の長所、短所をまとめた表です。

1-1. 電源構成の事例

電源構成の事例を新電力の株式会社ウエスト電力を例にとって説明していきます。ウエスト電力の電源構成は、4つの電源から構成されており、加工実績日本一のメガソーラーと産業用ソーラーが電源の中心となって、日本卸電力取引所からの調達と一般電気事業者を加えた構成となっています。

再生可能エネルギーをメイン電源としながら、安定供給のためにバックアップ電力も備えています。電源構成の内訳としては、

  • 太陽光発電(FIT電気):11%
  • 日本卸電力取引所(水力、火力、原子力、FIT電気、再生可能エネルギーを含む):46%
  • 常時バックアップ電力:43%

となっています。

特徴としては、晴天時、雨天時でうまく、太陽光発電とその他の電源をうまく使い分けています。晴天時の最も需要が高い日中は、太陽光発電の発電量を最大にし、まかないきれない需要を日本卸電力取引所から調達し、夜間は常時バックアップ電源を使用しています。

雨天時は一般電気事業者の常時バックアップ電源を上限まで活用し、残りを卸電力取引所から調達するといった形をとっています。

(参考:株式会社ウエスト電力HPより)

2. 電源構成のバランス

新電力を始めとする電力会社はいくつかの電源構成のバランスをとっています。電源の種類としてベースロード電源、ミドル電源、ピーク電源の3種類があります。それぞれ見ていきます。

2-1. ベースロード電源

ベースロード電源の定義は、昼夜を問わず継続的に稼働して発電することができる電源です。基幹となる電源の為、電力会社にとっては、設備や燃料のコストを低く抑えることが重要です。

日本国内では2000年代になり電源構成は安定し、ベースロード電源比率は約6割を確保しており、2011年の東日本大震災までは、原子力発電や水力発電がベースロード電源でしたが、震災後は原子力発電はほとんど稼働せず、電源比率は4割にまで落ちています。

現在は火力発電が主なベース電源となっています。

火力発電は燃料費が高騰していることや、CO2排出問題があるので、今後長期的にベースロード電源を担えるかどうかは困難という見方があります。他には地熱、水力、石炭などがベースロード電源として活用されています。

また資源エネルギー庁によれば、新電力のベースロード電源不足も指摘されています。(現在は供給力に占めるベースロード電源比率は新電力が1割、旧一般電気事業者は約3割)

この新電力と旧一般電気事業者の差を埋め、さらなる小売競争の活性化のために新電力がベースロード電源へのアクセスを可能とする目的でベースロード電源市場の新設を検討しているとしています。

(経済産業省:2016年12月5日 資源エネルギー庁「ベースロード電源市場について」より参照)

2-2. ミドル電源

ミドル電源はベース電源とピーク電源の中間的な役割を果たしています。東日本大震災前は火力発電がミドル電源の役目でした。経済産業省による定義としては、ベース電源の次に発電コストが低く抑えられ、需要に対して臨機応変に出力を調整できる電源と定義しています。

現在新電力は、ベースロード電源不足からこのミドル電源で代替しています。エネルギー源としてはLNG、LPガスなどが挙げられます。

2-3. ピーク電源

ピーク電源は1日のうち大きな需要がある時間帯だけ供給する電源です。ミドル電源と同様に需要の変動に臨機応変に出力を調整できる役割です。形式としては、揚水式水力発電所や、小規模でボイラ出力ができる石油火力発電などが多いのが特長です。

ただし、ベース電源やミドル電源と比較して発電コストは高いです。

2-4. 電源のベストミックス

電源のベストミックスとは、以上の3つの電源が最大のシナジー効果を発揮する組み合わせで、それぞれの特長と良さを発揮することができる組み合わせをいいます。現状では、それぞれの電源にコスト面や環境面などで課題があり、ユーザーの需要とのバランスをとるのが非常に難しいと言えるでしょう。

日本においては、エネルギー資源のほとんどを海外から輸入しているため、特定のエネルギーに頼るのではなく、それぞれのエネルギーの特色をうまく組み合わせるベストミックスの重要性が極めて重要といえます。

3. 電源構成の開示

経済産業省は2016年4月以降の全面自由化以後、電気小売事業に対して、電源構成の開示を要求しています。

その背景には、ユーザーが電気会社を選択する際に、電源構成を開示して説明することで選択の判断材料にしてもらいたいという理由があります。

ただ現段階では、電源構成の開示は義務化はされていなく、「電源構成の開示が望ましい」という段階にとどまっています。その中で、一部の新電力は電源構成やCO2排出係数を開示しています。

ユーザーにとっては、電源が再生可能エネルギーか火力発電などかは実際に届けられる時に混ざってしまうのであまり意味がないように感じるかもしれませんが、今後は再生エネルギーをアピールする新電力を中心に電源開示が進むことを期待したいところです。

3-1. 欧州の電源開示状況は?

ちなみにドイツなどの欧州各国では、電源構成などの開示が法律で義務付けられており、ユーザーはそれを参考に電力会社を選んでいます。

欧州では2009年に第二次EU電力指令が義務付けられ、購入する電源構成をHP上で知ることができますし、再生可能エネルギー100%の電気を販売する小売電気事業者も一定のシェアを得ています。

また発送電線分離や自由化における規制機関の権限も強く、発電源証明制度も整備されており電気市場でも電力開示が積極的に行なわれています。それによりユーザーも価格以外で電力を選ぶ文化が浸透しており、自然エネルギーへの理解が進んでいます。

スーパーマーケットに置かれている食材などは、産地や原材料名が表記されており、ユーザーは購入の際の参考にしています。同様に電気もユーザーが、発電源が環境に優しい電源なのかどうかを知ることができれば、環境への意識も高まるといえるでしょう。

しかし現在のところ、経済産業省は電源構成の開示については、推奨をしていますが義務化はしていません。その上で消費者庁は、小売事業者の電源構成などの開示状況を経済産業省を通じて尋ねるとしています。

今後は電力自由化以降、ユーザーがどういった電源構成の小売事業者を選択するかで、電力業界や社会が変わってくるといえるでしょう。

4. 日本の電源構成の課題と今後

日本のおいては、エネルギー自給率が5%~6%となっており、先進国の中でも低いのが現状です。常に諸外国からの輸入に頼っているので、世界情勢の影響を受けやすいのが課題といえます。実際に、過去に2度のオイルショックや、湾岸戦争時にエネルギー危機がありました。

そして2011年の震災の原発事故により、原子力発電が活用できない状況になり、原子力や石油への依存を減らして、LNG(液化天然ガス)の割合を増やすなどの取り組みを行ってきました。

しかし、LNGの化石燃料の輸入が増えるに従い、燃料費が高騰し電気料金の値上げを実行した電力会社もあります。

今後は原発も徐々に稼働し始めていますが、稼働には地域の反発も強く、再生可能エネルギーもまだまだ比率や普及に課題があることから早急な対策が求められています。

4-1. 今後の理想の電源構成

経済産業省は2015年6月1日に「2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス案)」を発表しました。この案によると以下の項目が挙げられています。

  1. 原子力を含む一次エネルギーの自給率を約25%にすること。
  2. 電力コストを現場より引き下げること。
  3. 欧米と比較しても遜色のない温室効果ガス削減目標を達成すること。

2030年度の望ましい電源構成は原子力20%、再生可能エネルギー24%、LNG火力27%

石炭火力26%、石油火力3%といった比率を発表しています。

2013年度から比較すると原子力が1%→20%へ、LNG火力が43%→27%、石油火力が14%→3%、再生エネルギーが11%→24%と大きな変化を求めていることが理解できます。

再生エネルギーの中でも太陽光の比率を7%と約3分の1としたい意向で、今後普及への取り組みが期待されます。

5. まとめ

新電力をはじめとする電力会社の電源構成は東日本大震災があったこともあり、どんな方法で発電→供給をしているのかは、これまで以上に国民の関心が高まっています。

電源の種類はベースロード電源、ミドル電源、ピーク電源とあり、電力会社は特性と需要のバランスを見て、ベストな組み合わせをしています。

しかし現状では新電力はベースロード電源不足であり、今後国はベースロード電源市場を新設して、新電力と旧一般電気事業者間での取引を推進したい方針を打ち出しています。

国は2030年をめどに、望ましい電源構成を発表し、太陽光などの再生可能エネルギーの比率を高めるなどしています。そして電力会社の電源構成の開示も推進していく方針です。

今後はユーザーも含め、国を挙げての活発な議論が求められています。

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