「これからはどこの会社から電気を買ってもいいですよ」そう言われてもなかなかピンとこないのは当たり前かもしれません。我々電力消費者は長い間、決められた会社からしか電気を購入できなかったのですから。
また電力自由化の中で誕生した「新電力」についても、仕組みをよく理解できていないため、既存の電力会社のサービスをそのまま使い続けている事業所もまだまだ多いです。
しかしそれではもったいない!新電力は仕組みを理解し自社に合ったプランを選ぶことで「電気代が安くなる」「各種サービスの恩恵を受けられる」「自社のポリシーに合った電力会社を選べる」など多くのメリットがあります。
新電力の仕組みを簡潔に解説し、比較検討するための6つのポイントをお伝えしていきますので、自社の電気選びの指針としてください。
1. 新電力の仕組み
1-1. 新電力の誕生経緯
戦後、日本の電力業界は『10電力体制』が長くとられてきました。全国を10エリアに分け、地域の電力会社が独占という形で発電から電気の販売までの全てを支えてきたのです。
その電力業界の仕組みを世界情勢や時代に合わせて変えていくことを目的に始まったのが、電力システム改革です。
電力システム改革は
- 電力の安定供給
- 電気料金をできるだけおさえる
- 需要家(消費者)の選択肢や事業者の事業機会を増やす
ことを目的に1995年より段階的に進められてきました。
このシステム改革により、これまで独占だった電力市場には競争原理が導入されました。『新電力』は改革により新たに市場参入した企業の総称として使われています。
電力システム改革の中で、私たち消費者にとって関わりが深いのは「電気の小売り事業」です。こちらも2000年から段階的に自由化が行われ、2016年4月には完全自由化が実現しました。
国に申請を出しライセンスを取得すれば、それまで電力事業に関わりのなかった企業でも参入することが可能になり、多くの企業が「新電力」として電力業界に参入しています。
新電力各社が工夫をこらした料金設定やサービスの提供を行い、メニュー数はこれからも増えていくことが十分に予想されます。
1-2. 新電力の電気代が安い理由
新電力は主に以下の理由によってコストをおさえ、利益を出すことで「電気代を安くする」「各種サービスの提供を行う」などを可能にしています。
- 大手電力会社のような大型発電設備を持っていないことで、設備維持費・ランニングコスト・人件費などをおさえることができます。
- 新電力はユニバーサルサービス(誰にも等しくサービスを提供すること)を担う必要がありません。つまり電気の売り先を選ぶことができます。そのため、より利益を出せるところにだけ販売を集中させ、効率的な経営ができるのです。
- 同様に、ユニバーサルサービスとしてのインフラ整備費を電気代にのせる必要がありません。
- 電気の仕入れ先を工夫し、仕入れコストをおさえています。
- 新電力の多くは電力販売とは別の事業を持っています。それらの事業との相乗効果で利益をだすことで、その利益を電気代に反映させています。
1-3. 新電力で選べること
私たち消費者が『電気を買う』ということは、『自社の電気の使い方や考え方に合った新電力が選べる』ようになったことを意味します。主な選択肢をあげてみます。
- 電気料金を比較し、より安い電力会社から電気を買うことができる
- 各種の付帯サービスから自社に合ったサービスを行っている電力会社を選べる
- 自社のポリシーにあった電源構成を行っている電力会社を選ぶことができる
- 地元企業など、応援したい地域や企業の電気を購入できる
電力自由化前は上記のような選択肢はありませんでした。電力自由化による新電力の誕生は、私たちに多くの選択肢が与えられたことを意味するのです。
2. 新電力に乗り換え検討する6ポイント
多くの新電力が誕生していますし、各社それぞれに特色のあるメニューを提示しています。全ての新電力の全てのメニューを検討しようと思うとかなりの数になります。
新電力を選ぶ際に比較検討すべきポイントを絞っておくことで、効率よく新電力のメニューを選ぶことができます。
2-1.電気供給エリアと加入条件
従来の大手電力会社とは違い、新電力には電気供給エリアを限定している会社もあります。また加入条件を設けているところもあります。
まずは自社が電気供給エリアになっているか?また加入条件に合うかを確かめましょう。
2-2. 電気料金と料金構成
事業所であれば電気料金を含む経費をおさえるのは当然のことです。経費削減は利益に直結しますし、重要事項であることは違いありません。
これまでの電気の使い方・電気料金を見返し、新電力各社から提示される電気料金プランをシミュレーションして電気料金を比較してみましょう。
また電気料金は、基本料金で安くなっている場合と電力量料金で安くなっている場合がありますので、自社の電気の使い方も合わせて検討することで、最も安いプランを探せるはずです。
2-3. セットや各種サービス
新電力の中には各種セット割引や付帯サービスを提供しているところも多いです。自社の業務と親和性の高いサービスを提供している新電力に絞り、価値の合うサービスを提供しているかを調べてみましょう。
2-4. 契約期間
新電力のプランには契約期間が規定されているものもあります。事業によっては契約期間を気にする必要があるかもしれません。途中解約は違約金が発生する場合もありますから、契約期間などのしばりがないかを確認するようにしましょう。
2-5. 支払い方法
新電力の中には、カード決済のみなど支払い方法を限定しているところもあります。また併せて締め日などを調べておくと安心です。
2-6. 電源構成
既存の地域電力会社は、火力発電または原子力発電によって電気をまかなっているところがほとんどです。電力自由化前は、このような電源構成であっても地域の電力会社を使うしかありませんでした。
しかし自由化後は、会社のポリシーなどに合わせて環境に配慮した電気を使っている新電力にこだわって選ぶことも可能です。
ただし今は電源構成の開示が義務づけられていないため、開示している会社はまだまだ少ないようです。また現在は制度上『100%自然エネルギーの電気』の購入は難しいというのが実情です。
しかし、自社として「少しでも自然エネルギーの電気を選ぶ」選択肢はできますから、電源構成にこだわるのであれば新電力会社に尋ねてみるのもいいですし、きちんと電源構成を公表している新電力から電気を買うということもできます。
3. まとめ
電力小売りの完全自由化は始まったばかりであり、新電力の仕組みについてもまだまだ理解されていない部分が多いです。
また新しく電力事業所に登録している新電力も増えていますので、切り替え時期については悩むことも多いかもしれません。
しかし新電力の仕組みを理解し、少しでも自社に合った新電力を選ぶことは、経費の面でも各種付帯サービスの面でもメリットが多いです。
事業所によっては、自社のポリシーに合う新電力を選ぶこともできますし、応援したい地域や企業の電力を買うことも可能です。
ポイントを絞って新電力を選び、少しでも早く電力自由化の恩恵を受けられるようにしていきましょう。
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