2016年の電力自由化に伴い、今まで地域を統括する電力会社、東京電力、関西電力など、としか電気の契約ができなかったものが、新規参入する電力会社「新電力」とも契約することができるようになりました。
この「新電力」は、電気事業法では「特定規模電気事業者(PPS)」と規定されており、経済産業省が12年3月から「新電力」という名前で呼ぶことにより認知されやすくなるようにしたという経緯があります。
1. 新電力の発電所とは
「新電力」は自前で発電所を持っている場合と持っていない場合があります。発電所を持っていない場合は、工場などの余剰電力を買い取ったり、電力の卸売会社から買い取ったりして調達します。
自前で発電している「新電力」においては、各会社で発電方法がバラバラですが、一つの特徴として、エコな発電方法を用いているということが挙げられます。エコな発電方法とは、二酸化炭素の排出量が少ない、再生可能なエネルギーを用いているということです。太陽光、風力、水力、地力、バイオマス発電などです。特に、東日本大震災の後、再生可能エネルギーを導入する会社が増えました。
2. 新電力の「電源構成」でエコ度を見てみる
各社の「電源構成」を見てみると、どの発電方法でどのくらいの電力量を得ているのかが分かります。例えば、丸紅新電力では、LNG(液化天然ガス、23.2%)、石炭(10.3%)、バイオ(8.2%)、太陽光(7%)などの構成が公表されています。(出典:https://denki.marubeni.co.jp/about/plant/)。
その他新電力では、例えば、「エネワン電気」では、バイオマス5%、太陽光2%。「ミツウロコ サンリンでんき」では、水力4.6%、バイオマス11.8% 太陽光3.2%。「ワタミファーム&エナジー」では、太陽光 30.6%の構成となっています。
3. 太陽光発電
新電力が所有する発電方法では、太陽光発電が圧倒的に多くなります。一方、石炭、石油、ガス、バイオマス、廃棄物発電などの火力系発電所を所有している所は少なくなります。
3-1. 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT、Feed In Tariff program)
太陽光発電が多くなっている背景としては、「再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度」が導入されたことによって、新電力が太陽光発電所を増設したことがあげられます。
「再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度」とは、太陽光、水力、風力、地熱など自然の力を利用し、バイオマスなど二酸化炭素排出量が少ない再生可能ええルギーの推進を目的として、電力会社に再生エネルギーによって発電された電気を、固定価格で買い取ることを義務づけた制度です。
(参照:経済産業省資源エネルギー庁)
3-2. 同時同量のペナルティー
「同時同量」は、電力を小売りする事業者に課される電力の受給調整のことです。電力は作り置きしておくことが難しく、また供給不足になってもいけないということで、需要と共有のバランスを常に調整しなければなりません。
具体的には、30分単位で需要量と発電量の差異を3%以内に抑えなければならず、差異が3%を超えるとペナルティー料金が課されます。
太陽光発電は、発電量が天候に大きく左右されるため、この受給バランスを取るのが難しくなってきます。そこで、発電方法を太陽光だけでなく、他の発電方法も組み合わせてバランスを取っていく必要があります。
3-3. 蓄電はできないのか?
電気が貯めておけないという問題に対しては、太陽光発電などによって、水素を生成して、水素を貯蔵するという実証実験がなされています。東芝がスコットランドにおいて実証実験を行っています。
4. 風力発電
風力発電は、自然の風で風車を回して、その回転エネルギーで発電する方法で、再生可能エネルギーです。風力発電の特徴としては事故が起こりにくいということが挙げられます。日本は、風力が強い海岸線を多く持つ地形をしているため、風力発電に適した場所ということができます。
太陽光発電と違い、一定の風力があれば24時間発電ができること、太陽光発電と比べると発電効率が良いことが挙げられます。(風力エネルギーの40%を電気エネルギーに変換できます。)
4-1. 風力発電は太陽光と比べると低コスト
風力発電は21.9円/kWh、太陽光発電(住宅用)は約29.4円/kWhと風力発電の方が低「発電コスト」で発電することができます。
「発電コスト」は、発電設備のコストを発電量で割り、1kWh(キロワット時)あたりのコストを算出したものになります。
資源エネルギー庁が出している「発電コスト」では、2014年時点で、一番低コストのものは原子力発電で、10.1円/1kWhです。次いで、水力発電11円/1kWh、石炭火力12.3円、LNG(液化天然ガス)火力13.7円となっています。石油火力は最高の30.6円で高コストかつ二酸化炭素排出量も多いということになります。
再生可能エネルギーの中では、地熱発電が19.2円、太陽光発電(非住宅用)は24.3円となっています。
2030年には、発電コストは低下する予測をしていて、風力発電(陸上)に関しては、13円台/1kWhまで下がるとしています。
4-2. 風力発電のリスク
風車の設置において地盤が緩み、その場所に大量の大雨が降ると土砂災害が起こるリスクがあります。その他、近隣に住宅などの建物がある場合、騒音が問題になる可能性があります。また、落雷による故障が多いということもあります。
4-3. 洋上風力発電
上記の土砂災害や騒音の問題おを解決し、より大量の発電を可能にする方法として、洋上風力発電が導入されてきています。洋上は陸上よりも建築コストがかかります。
環境省の取組みですが、2017年4月21日には、長崎県の五島列島の沖合で実証実験をしていた、洋上風力発電所が営業運転を開始しました。浮体式の洋上風力発電所は日本初だということです。福江島の沖合に発電所を設置し、海底ケーブルを通じて島に電力を供給しています。発電能力は一般家庭1、800世帯分に当たる2、000kwです。
5. バイオマス発電所
バイオマス発電では、例えば、「日本新電力」が佐賀県伊万里市に3基のバイオマス発電所を建設しています。東南アジアから輸入するパームヤシ
の殻を主燃料に利用します。新電力の日本ロジテック協同組合に全量売電するとしています。
5-1. 電力の地産地消による、地元産業の活性化
大分県日田市は、市が管轄する施設38箇所(市役所、図書館、全小中学校など)において、電気の調達を「九州電力」から「日田グリーン電力」(同市東有田)に変更する方針を発表しています。「日田グリーン電力」は、木質バイオマス発電を行う会社です。
日田市では、電力会社を切り替えることで、基幹産業である林業の活性化、地場企業の育成、市内経済の活性化、二酸化炭素排出量の低減を目的としています。バイオマス発電に切り替えることで500万円程度の経費削減効果があるということです。
鳥取市では、鳥取ガスがバイオマス発電所を建設し、地域の新電力の「とっとり市民電力」に販売し、「とっとり市民電力」が需要家に対して小売り(販売)するプロジェクトを進めています。
鳥取ガスは、鳥取市内の下水処理場で発生するガスを使った発電所、「秋里下水処理場バイオマス発電所(仮)」を建設し、年間発電量は約160万kWh、一般家庭約440世帯分の発電量を見込んでいます。
「とっとり市民電力」は2015年に鳥取ガスが90%と鳥取市が10%出資して設立した、地域の新電力で、鳥取ガスから買い取った電力を地域の需要家に小売りすることで、エネルギーの地産地消を目指しています。
このように、自治体と新電力が協力し合うことで、地元経済の活性化すると同時に、地球温暖化対策までしている例もあります。
まとめ
新電力の多くは、再生可能エネルギーを燃料とする発電方法を用いていたり、そのような発電設備で発電された電力を買ったりすることで、エコな電力を売買しています。政府や自治体も、エコ電力に積極的に取組む新電力を援助することで、地球温暖化対策や、地元産業の発展を推進しており、これからますます大きくなっていくマーケットでもあります。
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