必読!新電力の入札制度と卸電力市場の取引の詳細とは?

新電力は自社で発電設備を持たないことが多い為、電力調達の手段の一つとして入札による電力調達方法があります。今回は卸電力市場における入札制度をくわしく説明します。

1. 新電力の入札とは?

新電力が安定的にユーザーへ電力を供給するための一つの調達方法に、電源入札という方法があります。

これは、大手電力会社などの火力発電などの電源を入札することによって電力を確保するという仕組みです。

ユーザー側から見ても、新電力がこの入札システムを取り入れているかどうかは、新電力の倒産や停電などのトラブルの時に安定した電力が供給されるかどうかを判断する材料となります。

制度としては卸電力入札制度という電力取引が行われており、電力会社が入札を行い、一般電気事業者やIPP(独立系発電事業者)から電力を購入することができます。

電力会社が入札を行う際には、電力供給開始時期、電力規模、電源タイプ、契約期間などの要望を伝え、それに対して、一般電気事業者やIPP各社が自社の特長や強み、価格をアピールして電力会社と契約を結ぶ仕組みとなっています。

電力会社側のメリットとしては、一般電気事業者やIPP間で価格競争が起こり結果的に安い価格で電力を購入できる点や、電力の調達先が増えることになり、急なトラブル時でもユーザーに電力供給を継続することが可能になる点です。

逆にデメリットは、まだまだ売り手や買い手の入札価格に差がある現状で取引が成立しないケースがある点が挙げられるでしょう。

1-1. 電力スポット市場

電力スポット市場とは、卸電力取引所が開催する主要な電力取引市場の1つで、翌日に発電や販売する電気を前日までに入札して、取引を成立させる市場をいいます。

日本では日本卸電力取引所(JEPX)が電力スポット市場を開催しています。現在の取引量は全国の電力需要の2%未満(2014年度実績)となっており、約定量において一般電気事業者の割合は2016年1~3月期では売りが48%、買いが20%となっています。

(経済産業省:2016年5月25日 JEPX「日本卸電力取引所について」より参照)

①電力取引の仕組み

電力スポット市場では日々刻々と市場価格が変動しています。これは、日々の電力需要と供給状況の変化があるためです。通常は平日昼間が最も価格が高く、休日や夜間は安くなります。

また季節によっても価格は変化し、需要の大きい真夏や真冬は価格が上昇します。電力スポット市場は1コマ30分単位で取引されており、1日当たり48コマの商品があります。最低取引単位は1コマあたり500kWhとしています。

もし電気を売りたい場合は、複数の時間帯でまとめて入札もできます。

発電会社や大手電力会社などの売り手は、取引日までに売りたい電力量と価格を提示し、新電力や大手電力会社などの買い手は買いたい電力量と価格をオンライン上で札入れをしておき、需要と供給の均衡点をコンピューターが算出して1コマあたり1つの約定価格を決めるシステムとなっています。

この約定価格より高い価格で売ることはできませんし、安い価格で入札することもできない仕組みになっており、その場合は取引不成立となります。取引手数料は約定した量に対して、売り手、買い手共に1kWhあたり0.03円となっています。

約定した電気は、広域的運営推進機関システムを通じ、系統利用計画に反映されて受け渡しされます。

ちなみに入札は全て匿名で行うため、取引をする相手が誰なのかはわからないので、電力スポット市場自体が仮想発電所や仮想需要家とみられており、「電力プール」と呼ばれることもあります。

2. 大手電力会社の電力を市場へ

卸電力取引の活性化は電力市場活性化へ繋がるため、国は大半の電源を抱えている大手電力会社に一定量を市場に出すよう働きかけています。

現状では、国内にある発電設備のうち、約70%以上が大手電力会社が保有しています。国は2013年から大手の電力会社9社(沖縄電力を除く)に対して保有する余剰電力を日本卸電力取引所(JEPX)に供出するよう要求してきました。

その中で、電発電源(大半が火力発電と水力発電)と呼ばれる国内電源の6%を占めているものがありますが、この大手電力会社の電発電源の切り出しが2013以降あまり進んでいない現状にあります。

2-1. グロスビディングで市場活性化推進

政府は卸電力市場活性化のために、グロスビディング(gross bidding 電力会社が卸電力取引所に供出する発電量を事前に宣言して実行すること)を促進して、徐々に大手電力会社の電源の入札量を増やしていく方針を打ち出しました。

現在は電力会社各社の自主的な取り組みになっていますが、将来的には新しい制度となる可能性もあります。大手電力各社は当面、10%の切り出しから始まり、2018年から19年度には20%~30%まで引き上げる方針を打ち出しています。

現在の電力市場で販売電力量の90%を占めている大手電力会社が30%の電力を市場に供出することにより卸電力市場は活性化するとみられています。

その兆候として、スポット市場の売り入札量は、電力全面自由化がスタートした2016年4月以降も増えていませんが、取引の約定量は前年比で2倍になっています。これは新電力が市場を通じて調達する電力量が増えていることを示すものといえます。

一方で大手の電力は買い入札量を増やしましたが、約定量は減るという現象が起こっています。これは、新電力側が買い入札価格を高くし、確実に市場から電力を調達していることを示しているといえます。

新電力の買い入札価格も2016年4月から2倍近く高騰しています。しかし電力会社の売り入札価格が低下したため、1kwh7円から10円の範囲で収まり、これは、発電事業者から直接購入する価格とほぼ同価格の水準です。

大手の電力会社がグロスビディングで取引量を増やせば、新電力がより安い価格で電力を調達できる可能性が高まります。そうなれば、ユーザーにもより魅力的な料金プランが提供されるでしょう。

3. 今後の国の方針は?

今後国としては、さらなる卸電力市場の活性化に向けて検討が進められています。特に電力監視等委員会が定期的に客観的な監視(モニタリング)を行っています。

具体的な活性化策としては、電源開発の電源切り出し、料金規制の撤廃や卸電気事業者の売電先の多様化などが一般電気事業者の自主的取り組みにて十分に進捗がなされていないと判断した場合は、制度的措置も検討するとしています。

(経済産業省:平成28年5月25日「資源エネルギー庁 卸電力取引の活性化について」より参照)

3-1. 地球温暖化対策

資源エネルギー庁によれば、卸電力市場の活性化は、地球温暖化対策の一環としても期待があると述べています。

全ての小売電気事業者は、将来的に、非化石電源の調達を一定割合(2030年度に44%)にまで高めることが求められているとしており、国として卸電力市場の活性化はその実現のための環境の整備に繋がるとしています。

そして国会に提出されたFIT法改正案は2017年4月以降に締結する買取契約の買取義務者に相当する送配電事業者が買い取ったFIT電気を原則として卸電力取引所経由で小売電気事業者に引き渡すことを通して、将来的には卸電力取引所の取引活性化につながる期待があると述べています。

また国は資源の枯渇や、環境への負荷が少ない非化石エネルギー源の利用推進のために、低炭素電源市場の創出をし、小売電気事業者が非化石エネルギー源にアクセスしやすい市場環境の整備に取り組んでいくとのことです。

3-2. 地方公共団体との調達契約

資源エネルギー庁は2015年3月に卸電力活性化に向けた「地方公共団体の有する電源の一般競争入札化」のガイドラインを発表しています。

これは、従来は地方公共団体と旧一般電気事業者の間で契約していた卸電力契約について、一般競争入札による売電契約を市場に解放するというものです。

これまでは、3事業体(東京都、新潟県、三重県)が競争入札を実施しています。さらにいくつかの事業者と地方公共団体の間では、具体的な協議と検討が進められています。

2015年4月には「卸電力取引の活性化に向けた地方公共団体の売電契約の解消協議に関するガイドライン」が公表され、電力契約解消を含めた契約形態や料金設定のあり方が活発に意見交換されています。

4. 今後の課題

今後の卸電力市場の課題と今後の対応として、資源エネルギー庁が挙げているのが、以下の項目です。

(経済産業省:平成28年5月25日「資源エネルギー庁 卸電力取引の活性化について」より参照)

4-1. 販売、調達機会の提供の拡大

当事者の自主的取り組みにより、卸電力市場での入札量、取引の機会は増加してきていますが、取引の絶対量の水準はまだまだ低く、旧一般電気事業者の買入札が限定的であることや売買スプレッドの水準に課題がある可能性を指摘しています。

今後の対応としては、買入入札の低調な要因や売買スプレッド水準の構成要因などを分析をして、約定量を制限する要因を精査して改善策を策定することや、入札量を増加させるための対策を検討していくとしています。

4-2.価格指標の形成を推進

取引価格は継続的な低下傾向にあり、価格形成の背景の指標に対する妥当性と価格指標の信頼度は向上しているとしていますが、入札量の変動に応じた価格の変動量が大きいことや、売買スプレッドの水準の安定性や効率性に課題があるとしています。

今後の対応としては、価格の変動量や売買スプレッドの水準を継続的なモニタリングにより、安定化、効率化のための改善を検討していくとのことです。

4-3. 広範囲の需給のマッチングの推進

国内のエリアで電力流通量の格差が5倍以上見られることから、これを改善する必要があるとしています。今後は、各地域の電力会社の合理的な買入入札を推進していくことにより課題が解決されるとして、流通量や連系線の制約による流通規制の継続的なモニタリングをしていくとしています。

4-4. リスク管理

卸電力市場において、売りと買いの入札価格の差が大きく、約定にならないケースが多いことや、建玉の分散があることから、非常に限定的な市場になっているという課題があります、

そこで今後の対応としては、建玉の分散や利用方法の混乱を避けるために、先渡定型市場の廃止の検討、売りと買いの入札価格の乖離へのさらなる対策を検討するべきとしています。

5. まとめ

新電力は自社で発電設備を持たないことが多いことから、入札制度による卸電力市場から電力を調達しています。日本では日本卸電力取引所(JEPX)が電力スポット市場を開催しています。

しかし、大手電力会社の余剰電力の切り出し量がまだまだ限定的な面や、売り手と買い手の入札価格の乖離などの課題もあり、まだまだ限定的な取引量となっています。

国はさらに卸電力市場を活性化させる為に、様々なガイドラインを策定し、電力会社に働きかけています。

今後は地球温暖化対策も推進していく方針で、電気小売事業者の非化石燃料の電源調達推進や、FIT電気を卸電力取引所経由で小売電気事業者に引き渡すことも検討しています。

電力自由化により、よりユーザーに利益がもたらされ、かつ安心でき、かつ地球環境にも優しい電力市場にするために取り組みが国を挙げて推進されています。

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